谷川浜のナマコ種苗生産の取り組み ①ナマコ採取から水槽へ取り分けまで
牡鹿半島はリアス式海岸の入り組んだ地形が続き、大小さまざまな入江が点在していて、
海添いに30ヶ所以上の集落があります。
仙台湾に面して十八成浜や荻浜がある側を表浜と呼び、
女川湾に面して新山浜や泊浜や寄磯浜を裏浜と呼んでいます。
今回ご紹介する場所は裏浜にある谷川浜です。
県漁協谷川支所の青年部が取り組んでいる「ナマコの種苗生産試験」を取材しました。
青年部部長の阿部智司さんと青年部の皆さんにご協力をいただき、
今年の6月に海で親ナマコを採取する様子や受精〜孵化の様子までをご紹介いたします。
この取り組みは今年で4年目。磯焼けで漁獲できる資源が減少するなか、
磯焼けの影響と関係のないナマコを養殖することで、次世代の漁業者への資源を残す取り組みが行われています。
①6月23日の大潮に親ナマコを採取します。
この大潮の時期は産卵期にあたるそうです。
谷川青年部の多くの人が潜水のスキルを持っているそうなので、
みなさんで協力してあっという間にたくさんのナマコを採取していました。
採卵前に放卵・放精する危険があるので、海中では袋で個体を隔離する作業を行う必要があります。
外見からは雌雄の区別がつかないそう。下の写真は卵子を持った雌です。
②飼育水槽の管理について
水槽内にナマコの天敵となる甲殻類が混入してしまうと稚ナマコが食害にあうため、
採取後のナマコを洗浄し、砂を吐かせる作業を行います。
また、他の作業で海水を触った手には甲殻類が付着している可能性があるため、こまめに手洗いをしていました。
非常に細かいフィルター(0.1mmネット→0.005mmフィルター→0.0005mmフィルター)で濾過した海水を使用しています。
過去にナマコの体表面や砂から発生したシオダマリミジンコが混入したことで稚ナマコが全て食べられてしまったという苦い思い出があるそうです。
③採取したナマコを水槽に入れた後は5度加温して放卵・放精を待ちます。
放卵・放精の予測ができないために待つしかなく、当日15:00に放卵・放精が始まり、慌ただしく作業開始となったそう。
②、③の様子は種苗生産技術の指導を行なっている宮城県の水産業普及指導員から写真をご提供いただきました。
▼放卵の様子
④6月24日 ナマコ孵化後の取り分け作業
受精から24時間後には孵化が始まります。
顕微鏡で受精卵を観察して孵化を待ちます。
15:30 嚢胚期(のうはいき)幼生
⑤水槽の準備
収容密度試験区の水槽(200L)は4槽
①20万個体(100%)
②16万個体(80%)
③12万個体(60%)
④8万個体(40%)
他1t水槽に100万個体、500L水槽2槽に各50万個体を収容していきます。
16:30 水産業普及指導員が受精卵収容水槽内の嚢胚期幼生の密度計算をしていきます。
⑥試験区兼養殖用水槽へ移します(17:00)
水槽の嚢胚期幼生は、水面に集まる性質を持っているため、
水面を平行にライトで照らすと、嚢胚期幼生が光を反射し、ツブが舞っているように目視できます。
刺激を与えるとその箇所から幼生がいなくなるため、偏りがないように慎重にコップですくい上げていきます。
受精から孵化までのスピードが早く、時間刻みでの作業が行われていました。
これからは餌などの管理をしながら飼育が始まります。
次回も続きます。成長と沖出しまでの様子を追っていきたいと思います!
(季刊誌夏号にも掲載しますので、お楽しみに!)